山田太一さんの小説には、いつも衝撃を受けるんです。
たとえば、『岸部のアルバム』だって、タイトルからは、
のんびりと緑豊かな岸部にある住宅で、繰り広げられる人間模様
ってなイメージで読み始めるわけです。
違うのだな、これが。
「岸部のアルバム」というのは、虚栄の世界のこと。他人から見た「幸せで平和な家庭」の象徴。
絵にかいたような「幸せ家庭」なんて、あるはずないわけです。
そのように見せようと思っている人たちはいますけどね。
この本は、タイトルからは想像できない世界です。
そこが、山田さんのすごさかなぁ。
そして、そういう驚きがあるところが小説の面白さですね。宮部みゆきさんだと、もう少し女性らしい「優しさ」があって、たとえ衝撃的な内容でも、読者は最終的にはほっとするんですけど、山田さんの小説は「ゾッ」としちゃうのです。容赦なし。
以前読んだ、
も、ゾッとしましたね~。ぞわっとするほど冷たくて自分勝手な他人と、愛するわが子に対する無償の愛を持つ親が、対照的に描かれています。
おすすめの一冊です。